介護生活でデジタルツールを活用。苦手でも大丈夫な負担軽減術
日々の介護、デジタルツールで少しだけラクになるヒント
毎日休むことなく続く親御さんの介護、本当にお疲れ様です。やらなければならないことに追われ、ご自身の時間や休息が十分に取れていない方も少なくないでしょう。特に自営業を営みながらの介護は、仕事と介護の両立という大きな負担も伴います。
「もう少し時間が欲しい」「少しでも体の負担を減らしたい」そう感じていらっしゃるかもしれません。介護に関する情報は増えていますが、「新しいサービスやアプリを覚えるのは大変そう」「今のやり方で精一杯で、新しいことに挑戦する余裕なんてない」と、新しいツールや技術の活用にハードルを感じる方もいらっしゃるかと思います。
でも、ご安心ください。日頃お使いのスマートフォンやパソコンで、少しだけ介護の負担を軽くできる方法があることをご存知でしょうか。難しい操作は必要ありません。今使っているツールや、身近にある簡単な機能を少し活用するだけで、情報管理や家族との連携、時間管理などが少しラクになることがあります。
この記事では、ITが苦手だと感じている方でも取り組みやすい、介護生活で役立つデジタルツールの活用方法をご紹介します。ご自身のペースで、できることから試してみてください。
なぜデジタルツールが介護負担軽減に役立つのか
デジタルツールと聞くと、専門的な知識が必要だと感じてしまうかもしれません。しかし、ここでご紹介するツールは、すでに多くの方が日常的に使っているものです。これらのツールを介護という視点で活用することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 情報の整理と共有: 親御さんの健康状態、通院日、薬の種類、ケアマネジャーとのやり取りなど、介護には多くの情報が伴います。これらの情報をデジタルで管理・共有することで、いざという時に必要な情報がすぐに見つかり、家族間での情報伝達ミスも減らせます。
- 時間管理と忘れ防止: 通院やサービスの予約、服薬時間など、忘れてはならない予定やタスクが多くあります。スマートフォンの機能を使ってリマインダーを設定すれば、うっかり忘れを防ぎ、スケジュール管理がスムーズになります。
- コミュニケーションの円滑化: 遠方に住む家族や、忙しい兄弟姉妹との連絡が取りやすくなります。文字だけでなく、写真や動画で親御さんの様子を共有することで、離れていても安心感を得られます。
- 情報収集と手続きの効率化: 介護サービスや支援制度に関する情報、行政の手続きなどは、インターネットで調べることができます。最新の情報を手軽に入手でき、役所に行かなくてもダウンロードできる書類などもあります。
- 物理的な負担の軽減: ネットスーパーや宅配サービスを利用すれば、重い買い物をする負担を減らすことができます。
これらのメリットは、少しの時間と労力を生み出し、結果としてご自身の休息やリフレッシュに繋がる可能性があります。
介護生活で使える、身近なデジタルツールと活用法
では、具体的にどのようなツールがあり、どのように活用できるのでしょうか。難しい操作が少ない、身近なツールを中心に見ていきましょう。
1. メッセージアプリ(LINEなど)
スマートフォンをお使いであれば、LINEなどのメッセージアプリを利用している方も多いでしょう。家族との連絡手段としてだけでなく、介護の場面でも非常に役立ちます。
- 家族間の情報共有グループ: 兄弟姉妹や親戚など、介護に関わる家族でグループを作りましょう。親御さんの体調の変化、サービス利用の状況、病院での診断結果などをリアルタイムで共有できます。電話で一人ずつ連絡する手間が省けます。
- 写真や動画での情報共有: 親御さんの様子の写真や、食事の記録などを共有することで、離れていても状況を把握しやすくなります。「今日はこんなものを食べました」「こんな表情で過ごしています」といった情報共有は、家族全体の安心感にも繋がります。
- 簡単なメモやToDoリスト: グループ内で「〇月〇日 〇時 〇〇病院予約」「△△の薬を〇個買う」といったタスクを共有し、誰が担当するかを決めるなど、連絡事項を明確にできます。
活用のポイント: グループを作る際は、参加者全員が無理なく使えるかを確認しましょう。文字入力が難しい場合は、音声入力機能を使う方法や、スタンプで返事をするなどのルールを決めるのも良いでしょう。
2. スマートフォンのカレンダー・リマインダー機能
スマートフォンの初期機能として必ず入っているカレンダーアプリは、予定管理に非常に便利です。
- 通院、サービス利用、訪問予定の登録: ケアマネジャーとの面談、訪問介護やデイサービスの利用日、通院日など、決まっている予定をカレンダーに登録します。繰り返し設定できる機能を使えば、定期的なサービス利用日を一度設定するだけで管理できます。
- リマインダー機能での忘れ防止: 登録した予定に対して、事前に通知が来るように設定できます。服薬時間や、デイサービスの送り出し・迎えの時間など、忘れてはならない時間の少し前に通知が来るように設定しておけば、慌てずに済みます。
- 家族とのカレンダー共有: 一部のカレンダーアプリには、家族間でカレンダーを共有する機能があります。家族全員が親御さんの予定を把握できるようになり、連絡の行き違いを防げます。
活用のポイント: まずは最も忘れやすい、あるいは重要な予定(例: 通院日)だけを登録してみましょう。慣れてきたら、他の予定も追加していくのがおすすめです。通知時間をどのように設定すれば自分にとって便利か、いくつか試してみるのも良いでしょう。
3. 地図アプリ(Googleマップなど)
病院や役所への移動、初めて訪れる場所への経路確認に役立ちます。
- 経路検索と所要時間確認: 親御さんを病院に連れて行く際など、出発地から目的地までの最適な経路、かかる時間、交通手段などを簡単に調べられます。渋滞情報なども確認できるため、出発時間の計画に役立ちます。
- 周辺施設の検索: 病院の近くの薬局や、買い物がしやすいスーパーなどを探すのに便利です。
- ストリートビューでの事前確認: 不安な場所へ行く前に、現地の写真を確認できます。駐車場の入り口や、建物の外観などを事前に見ておけば、当日スムーズに行動できます。
活用のポイント: アプリを開いて「目的地までの経路」を調べるだけで十分便利です。現在地から調べる機能を使えば、入力の手間も省けます。
4. ネットスーパー・宅配サービス
日常の買い物は、介護と仕事に追われる中で大きな負担になりがちです。
- 食料品や日用品の宅配: ネットスーパーや、生協などの宅配サービスを利用すれば、自宅にいながら食料品や日用品を購入し、届けてもらうことができます。重い物を運ぶ必要がなくなり、買い物に割いていた時間を他のことに使えます。
- 見守りサービス付きの宅配: 一部のサービスでは、配達員が手渡しする際に簡単な安否確認を行う「見守りサービス」を提供している場合もあります。
活用のポイント: 利用したいお店のウェブサイトや、サービス提供会社のウェブサイトから登録・注文が可能です。最初は頻繁に利用する商品だけを注文してみるなど、少量から始めてみるのがおすすめです。
5. 自治体や公的機関のウェブサイト
介護保険制度や利用できるサービス、手続きの方法など、公的な情報はこれらのウェブサイトに掲載されています。
- 最新情報の確認: 制度の改正や新しい支援策など、常に最新の情報が確認できます。
- 申請書類のダウンロード: 役所に取りに行かなくても、ウェブサイトから必要な書類をダウンロードして印刷できる場合があります。
- 窓口の検索: 地域包括支援センターや役所の介護担当窓口の連絡先や所在地を調べることができます。
活用のポイント: ウェブサイトは情報量が多い場合もありますが、「介護保険申請」「〇〇市 介護サービス」といったキーワードで検索すると、必要な情報にたどり着きやすいでしょう。分からない点は、電話で問い合わせるのが確実です。
デジタルツール活用への第一歩
「やっぱり難しそう」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、最初から全てのツールを使いこなす必要は全くありません。
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まずは、ご自身の「困りごと」を一つ書き出してみましょう。
- 「家族への連絡が大変」
- 「病院の予約日をよく忘れる」
- 「買い物に行く時間がない、重いものが辛い」
- 「親の情報を整理できていない」
- 「介護サービスの情報がよく分からない」 など、どんな小さなことでも構いません。
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次に、その困りごとを解決できそうなデジタルツールはどれか、この記事を読み返して考えてみましょう。
- 連絡が大変 → メッセージアプリ
- 予約日を忘れる → カレンダー・リマインダー機能
- 買い物 → ネットスーパー・宅配サービス
- 情報整理 → メッセージアプリ(家族グループでの共有)
- サービス情報 → 自治体のウェブサイト
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解決できそうなツールが見つかったら、まずはその一つのツールの、最も簡単な機能だけを試してみましょう。
- LINEで家族にメッセージを送る、グループを作ってみる。
- スマートフォンのカレンダーに、今日か明日の予定を入れて、通知が来るか試してみる。
- よく利用するスーパーがネットスーパーに対応しているか、ウェブサイトを見てみる。
一番大切なのは、「完璧に使おう」と思わないことです。まずは「少しでもラクになるかな?」という軽い気持ちで、一つだけ、簡単なことから試してみてください。もし操作方法が分からなくても、ご家族や友人、あるいはスマートフォンの購入店などに聞いてみるのも良いでしょう。
まとめ:あなた自身の負担を減らすために
デジタルツールは、決して介護の全てを解決する魔法の杖ではありません。しかし、情報伝達の効率化、時間管理のサポート、物理的な負担の軽減など、日々の介護の中で少しずつあなたの負担を減らしてくれる可能性を秘めています。
「ITは苦手だから」と最初から諦めるのではなく、「これならできるかも」と思えるものから、一つずつ試してみてはいかがでしょうか。そこで生まれたわずかな時間が、あなた自身が心身を休めるための貴重な時間になるかもしれません。
介護は長期にわたることが多く、ご自身の心と体を健康に保つことが何よりも大切です。使えるものは賢く利用して、少しでもご自身の負担を減らし、大切ないのちを支える毎日の中で、ご自身のことも大切にしてください。
これからも「ケアする私も大切に」では、介護とご自身の生活を両立するための様々な情報をお届けしていきます。
注: 記事中で紹介したデジタルツールの名称は一般的な例です。ご利用のスマートフォンやサービスによって名称や機能が異なる場合があります。具体的な使い方については、各ツールやサービスのヘルプ機能や公式サイトをご確認ください。