地域包括支援センター、実は何をしてくれるの?介護の負担を減らす活用法
日々の介護、本当にお疲れ様です。朝から晩まで、あるいは夜間も続く介護に追われ、ご自身の心や体を休める時間がなかなか取れない方もいらっしゃるのではないでしょうか。どこかに相談したいと思っても、どこに話せば良いのか分からない、調べる時間もない、と一人で抱え込んでしまうこともあるかもしれません。
介護に関する悩みを抱えたとき、「地域包括支援センター」という名前を聞いたことがある方は多いと思います。しかし、「具体的にどんな場所なの?」「何ができるの?」と、その役割がよく分からないまま、利用をためらっている方もいらっしゃるかもしれません。
地域包括支援センターは、高齢者の皆さんが住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、さまざまな方面から支えるための地域の総合相談窓口です。そして、この場所は、介護を「する側」、つまりあなた自身が、介護の負担を少しでも軽くし、ご自身の心身を守るために活用できる、非常に大切な場所なのです。
地域包括支援センターとは?あなたの町の「よろず相談所」
地域包括支援センターは、市町村が設置主体となり、高齢者の皆さんの暮らしを地域でサポートするために設けられています。ここでは、保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーといった専門職がチームとなって、高齢者やそのご家族からの様々な相談に応じています。
イメージとしては、あなたの町の「高齢者のための総合相談所」あるいは「よろず相談所」のような存在です。介護のことだけでなく、健康のこと、お金のこと、近所付き合いのことなど、高齢者に関わる幅広い相談に乗ってくれます。
そして大切なのは、ここでは「介護を受ける高齢者本人」のためだけでなく、「介護をしているご家族(介護者)」からの相談も受け付けているという点です。日々の疲れ、精神的なつらさ、将来への不安など、あなたが抱えている率直な気持ちや困りごとを安心して話せる場所なのです。
具体的にどんな支援をしてくれるの?
地域包括支援センターでは、主に次のような支援を行っています。これらの支援は、直接的または間接的に、介護者であるあなたの負担軽減や休息確保につながるものです。
- 介護に関する総合的な相談・支援 「親の介護が必要になったけれど、何から始めたら良いか分からない」「今の介護サービスで十分か不安だ」「もっと良いサービスはないか知りたい」といった、介護全般に関する相談に応じます。介護保険制度の仕組みやサービスの種類について、分かりやすく説明を受けることができます。
- 介護保険サービス利用の支援 介護保険サービスを利用したい場合、その申請手続きのサポートや、ケアマネジャーの紹介・選定に関する情報提供を行います。忙しい中で煩雑な手続きを進めるのは大変ですから、こうした支援は大きな助けになります。
- 介護予防に関する支援 高齢者ができる限り自立した生活を続けられるよう、体操教室や趣味活動など、地域で行われている介護予防のための取り組みに関する情報を提供します。親御さんがこうした活動に参加することで、親御さんの健康維持につながるとともに、介護者の方に少し休息の時間が生まれる可能性もあります。
- 高齢者の権利擁護 認知症などにより判断能力が低下した高齢者を守るため、成年後見制度の紹介や、消費者被害に関する相談などに応じます。また、高齢者虐待に関する相談窓口でもあります。
- 地域の様々な資源との連携・活用支援 ここが地域包括支援センターの重要な役割の一つです。介護保険サービスだけではカバーしきれない部分について、地域のボランティア活動、NPO法人が提供するサービス、民間の見守りサービスや配食サービスなど、様々な「地域の資源」に関する情報を持っています。そして、あなたのニーズに合わせて、これらのサービスと繋いでくれる調整役も担ってくれます。
地域包括支援センターを「自分のため」に活用する視点
日々の介護に追われる中で、ご自身の疲れや限界を感じているなら、ぜひ地域包括支援センターを「あなたのための場所」として積極的に活用していただきたいのです。
- ご自身の心身のつらさを正直に伝える 「自分が倒れたらどうしよう」「毎日疲れてイライラしてしまう」「睡眠時間が足りない」といった、ご自身の率直な気持ちや体の状態を相談員に伝えてみてください。センターの専門職は、あなたの介護負担を軽減するための方法を一緒に考えてくれます。
- 「〇〇な時間が欲しい」と具体的に希望を伝える 漠然とした疲れだけでなく、「週に一度、半日だけでも自分の時間が欲しい」「月に一度はゆっくり休める日が欲しい」といった具体的な希望を伝えてみましょう。担当者は、あなたの希望を叶えるために、ショートステイやデイサービスなどの利用調整、地域のボランティアによる見守り、家事支援サービスなど、様々な選択肢を提示し、利用できるよう支援してくれます。
- 仕事との両立の悩みを相談する 自営業でいらっしゃるなら、介護と仕事の両立は大きな課題でしょう。地域包括支援センターは、介護保険サービスや地域の資源を活用することで、親御さんを日中安心して預けられる場所を探したり、自宅での介護をサポートするサービスを紹介したりするなど、仕事時間を確保するための具体的な方法について相談に乗ってくれます。
- 緊急時の対応について相談する 親御さんの急な体調変化などが不安な場合、緊急時の連絡先や、いざという時に頼れるサービス(ショートステイの空き状況、夜間対応のサービスなど)について事前に情報収集し、もしもの時のための計画を立てる手助けをしてくれます。
センターの専門職は、あなたの話に耳を傾け、一人で抱え込まずに済むような、あなたに合った支援策を一緒に見つけ出してくれます。「こんなこと相談しても良いのかな」と遠慮せず、まずは連絡してみてください。
地域包括支援センターを利用するステップ
地域包括支援センターの利用は、決して難しくありません。情報収集が苦手な方でも、以下のステップで気軽にアクセスできます。
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センターを探す お住まいの市町村には、必ず地域包括支援センターが設置されています。たいていの場合、お住まいの地域ごとに担当のセンターが決まっています。
- 一番簡単な方法: お住まいの市町村役場の高齢福祉課や介護保険課に電話で問い合わせて、「地域包括支援センターはどこにありますか?」「うちの地域の担当はどこですか?」と聞いてみましょう。
- インターネットで探す: 市町村の公式ウェブサイトに情報が掲載されていることが多いです。「〇〇市 地域包括支援センター」と検索してみてください。(スマホでの検索に慣れていれば可能です)
- 広報誌やパンフレット: 市町村が発行する広報誌や、役所、公民館などに置いてあるパンフレットに情報が載っていることもあります。
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連絡する センターが見つかったら、まずは電話で連絡してみましょう。「介護で困っていることがあるのですが、相談できますか?」と伝えてください。突然訪問するよりも、事前に電話で予約を取る方がスムーズなことが多いです。
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相談する 電話で簡単な状況を伝えた上で、訪問日時を決めてセンターを訪れるか、状況によっては担当者が自宅に来てくれる場合もあります。相談時には、親御さんの状況(どんなことで困っているか、体の状態など)だけでなく、あなたがどんなことで困っているか、どんなサービスがあれば助かるか、どんな時間が欲しいか、といったご自身の状況や希望を遠慮なく伝えてください。
相談にかかる費用は無料です。相談した内容や個人情報が、あなたの同意なく外部に漏れることはありませんので、安心して話すことができます。
介護の負担を減らし、自分を守るために
地域包括支援センターは、介護保険サービスに限定されず、地域のあらゆる社会資源を活用して、高齢者とそのご家族を支える役割を担っています。
特に、時間に追われ、心身の疲労が蓄積している介護者の方にとって、この場所は「情報が得られる場所」であると同時に、「つらい気持ちを受け止めてもらえる場所」「自分自身を大切にするための具体的な方法を一緒に探してくれる場所」になり得ます。
「こんなこと、相談して良いのかな?」と思うような小さなことでも構いません。まずは一歩踏み出して、地域の地域包括支援センターに連絡してみてください。あなたの町の専門家たちが、きっと力になってくれるはずです。一人で抱え込まず、頼れる場所を上手に活用しながら、ご自身の心と体もどうか大切にしてください。