忙しい介護者さんへ。買い物や食事準備、見守りを助ける便利なサービス活用法
毎日、高齢のご家族を支え、本当にお疲れ様です。特に、お仕事(自営業など)と介護を両立されている方にとって、時間はいくらあっても足りないと感じていらっしゃるのではないでしょうか。
介護保険サービスを上手に利用されている方も多いと思いますが、それでも日々の細かなタスク、例えば「明日の食材がない」「今日のご飯を作る元気がない」「ほんの少しの時間でも目を離すのが心配」といった、介護保険ではカバーしきれない「小さな負担」が積み重なり、心身の疲れを増していることがあります。
これらの小さな負担も、実は「外部の力」を借りることで大きく軽減できる可能性があります。今回は、介護保険サービスとは別に、比較的利用しやすく、日々の生活の質を高めるのに役立つ便利なサービスについてご紹介します。
介護保険外サービスで「小さな負担」を減らす
介護保険サービスは、要介護認定に基づき、専門的なケアや支援を提供する大切な制度です。しかし、介護保険の対象とならないサービスや、自己負担が大きくなるサービスもあります。ここでご紹介したいのは、そういった介護保険の枠にとらわれず、日々の暮らしの中で「ちょっと助けてほしい」に応えてくれる民間のサービスや、自治体などが提供する独自のサービスです。
特に、日々の「買い物」「食事の準備」「ちょっとした見守り」といった部分は、介護保険の給付対象外となることも多く、介護者が担う割合が高くなりがちです。これらの部分で外部の力を借りることで、時間にゆとりが生まれ、休息の時間を確保したり、ご自身の健康を保つための活動に時間を使ったりすることが可能になります。
新しいサービスやアプリに馴染みがない方もいらっしゃると思いますが、中には電話一本で利用できたり、ウェブサイトからの簡単な手続きで始められたりするものも多くあります。まずは、ご自身の「一番負担に感じていること」を一つ取り上げて、それに合うサービスを探してみることから始めてみましょう。
買い物、食事、見守り...具体的なサービスとその活用法
1. 買い物代行サービス
「介護があって思うように外出できない」「荷物が重くて運べない」「買い物に行く時間を確保できない」といった悩みを抱えている方に役立つのが買い物代行サービスです。
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どんなサービスがある?
- ネットスーパーや宅配サービス: 大手のスーパーや食品宅配会社が提供しており、インターネットや電話で注文した商品を自宅まで届けてくれます。食品だけでなく、日用品なども一緒に頼めることが多いです。
- 専門の買い物代行業者: 高齢者やその家族向けに、買い物リストに基づき店舗で買い物をし、自宅まで届けてくれるサービスです。商品の選択などを任せられる場合もあります。
- 地域の互助サービス: ボランティア団体やNPOなどが、地域住民向けに買い物の支援を行っている場合があります。費用が安価であったり、顔なじみの人が来てくれたりする安心感があります。
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活用アイデア
- 「重たいものやかさばるもの(お米、飲料、トイレットペーパーなど)だけを頼む」
- 「週に一度、まとめて注文して食料品や日用品を補充する」
- 「体調が優れない日や、どうしても時間が取れない日に利用する」
配送料や利用料はサービスによって異なりますが、買い物にかかる時間や労力を考慮すると、活用するメリットは大きいと言えます。インターネットでの注文に抵抗がある場合でも、電話で受け付けてくれるサービスもありますので確認してみましょう。
2. 配食サービス
毎日の食事の準備は、栄養バランスを考えたり、本人の食べやすい形態にしたりと、介護者にとって大きな負担となりがちです。「今日は疲れて料理ができない」「本人の嚥下状態に合わせた食事が難しい」といった時に頼りになるのが配食サービスです。
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どんなサービスがある?
- 高齢者向け配食サービス: 栄養バランスやカロリーに配慮され、刻み食、ミキサー食、減塩食など、様々なニーズに対応したお弁当やお惣菜を届けてくれます。安否確認を兼ねているサービスもあります。
- 冷凍・チルド弁当の宅配: 専門業者や食品メーカーなどが提供する、湯煎や電子レンジで温めるだけで食べられるお弁当です。まとめて注文しておき、必要な時に使うことができます。
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活用アイデア
- 「夕食だけは配食サービスを利用する」
- 「週に何回か決めて、調理の負担を減らす」
- 「自分が外出する日の食事として準備しておく」
- 「栄養バランスが偏りがちな時に利用する」
特に高齢者向けの配食サービスは、配達時に本人の安否確認をしてくれる場合があり、これも介護者にとって大きな安心材料となります。味付けやメニューの種類など、お試し利用ができるサービスもありますので、いくつか試して本人に合ったものを見つけるのが良いでしょう。
3. 簡単な見守りサービス
「短時間だけ家を空けたいけど心配」「離れて暮らしているが、いつも元気か確認したい」といった見守りのニーズに応えるサービスもあります。大がかりなシステムではなく、比較的簡単な方法で安否を確認できるものが利用しやすいでしょう。
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どんなサービスがある?
- 電話による安否確認サービス: オペレーターが決まった時間に電話をかけ、本人の応答で安否を確認します。異変があれば、事前に登録した連絡先(介護者など)に報告が入ります。
- ライフライン連動型見守り: 電気ポットや冷蔵庫、ガスなどの使用状況を遠隔で確認できるサービスです。普段と違うパターンがあれば、異変の可能性を察知できます。
- 訪問員による短時間確認: 事業所の職員などが、短時間自宅を訪問し、声かけなどで安否を確認するサービスです。
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活用アイデア
- 「自分が買い物や短時間の用事で外出する際、その間に安否確認を依頼する」
- 「毎日決まった時間に電話を入れてもらい、ルーティンとして安否を確認する」
- 「離れていても、電気の使用状況などで大まかな生活リズムを確認する」
これらのサービスは、介護保険の訪問介護のような身体介助や生活援助は含みませんが、「元気かどうかを確認する」という目的に特化しており、費用も比較的抑えられる場合があります。完全に安心することは難しいかもしれませんが、ちょっとした「隙間時間」を安心して確保するための助けになります。
サービス利用への「心のハードル」を下げる
「お金がかかるし、自分でやった方が節約になる」「人に頼むのは申し訳ない」「自分でやった方が早い、慣れている」——このように考え、サービス利用に抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。特に、これまでご自身で何でもこなしてきた方にとっては、誰かに頼ることに罪悪感を覚えることもあるでしょう。
しかし、これらのサービスを利用することは、「手抜き」でも「怠慢」でもありません。むしろ、ご自身の心と体を守り、介護を長く続けるために必要な「賢い選択」です。
介護は長期戦です。無理を重ねてご自身の健康を損なってしまっては、元も子もありません。少し費用がかかっても、時間や体力を確保できるのであれば、それは自分自身への、そして結果として介護を受けているご家族への「投資」と考えることもできます。
まずは、「週に一度だけ配食を頼んでみる」「重いものを買う日だけネットスーパーを使ってみる」といった、小さな一歩から試してみてはいかがでしょうか。実際に利用してみて、得られるゆとりや安心感を実感することができれば、サービス利用への抵抗感も和らぐかもしれません。
情報収集のヒント
新しいサービスを探すのは大変だと感じるかもしれません。どこから情報を得れば良いのでしょうか。
- 地域包括支援センターや市区町村の福祉課(介護保険課): 公的な窓口で、地域の高齢者向けサービスや制度に詳しい担当者がいます。介護保険サービスだけでなく、介護保険外のサービスや地域の取り組みについて情報を持っている場合もあります。まずはここに相談してみるのが良いでしょう。
- ケアマネジャー: 介護保険サービスを利用している場合、ケアマネジャーは介護全般の相談に乗ってくれる専門家です。介護保険外のサービスについても、利用者の状況に合わせて情報を提供したり、アドバイスをしてくれたりすることがあります。遠慮なく相談してみましょう。
- インターネット検索: もしインターネットでの情報収集に抵抗がなければ、ご自身の住んでいる地域名と「買い物代行」「高齢者 配食サービス」「見守りサービス」といったキーワードで検索してみるのも有効です。地元の事業者やNPOなどが見つかることがあります。ただし、情報が多すぎる場合は、公的な窓口で相談した方が効率的です。
- 民生委員: 地域で活動する民生委員の方も、地域の高齢者福祉サービスについて情報を持っていることがあります。
サービスによっては、電話一本で問い合わせや申し込みができるものも多くあります。まずは気になったサービスに電話で問い合わせて、詳しい話を聞いてみるのも良いでしょう。
まとめ:小さな負担を減らして、自分を守る
毎日の介護、特に買い物や食事の準備、ちょっとした間の見守りは、目立たないけれど確実に体力を奪い、心をすり減らしていきます。これらの「小さな負担」を一人で抱え込まず、外部の力を借りることをぜひ検討してみてください。
今日ご紹介した買い物代行、配食サービス、簡単な見守りサービスなどは、あくまで一例です。あなたの住む地域には、他にも様々な支えとなるサービスがあるかもしれません。
「自分は大丈夫」「これくらい自分でできる」と頑張りすぎてしまう気持ちも理解できます。しかし、あなた自身が心身ともに健康であってこそ、長く安定した介護を続けることができます。
外部のサービスを上手に活用して、介護にかかる時間や労力を少しでも減らし、休息の時間を確保したり、ご自身の好きなことに時間を使ったりしてください。それは決して「手抜き」ではなく、「自分自身を大切にする」ための必要なステップです。
一人で抱え込まず、利用できるものは賢く利用して、ご自身のケアも大切にしてください。