自営業と親の介護、どう両立する？仕事を守りながら負担を減らす方法
自営業と介護の両立に悩んでいませんか？
日々の事業と、高齢の親御さんの介護。その両立は、想像以上に心身の負担が大きいことと思います。特に自営業の場合、仕事の時間は自分で調整できる反面、収入が介護の状況に左右されたり、代わりに仕事をしてくれる人がいなかったりと、特有の難しさがあるのではないでしょうか。
介護のために取引先との約束を変更したり、納期が遅れてしまったり。夜間の介護で睡眠時間が削られ、日中の仕事に集中できない。そんな状況が続けば、当然ながら疲労は蓄積し、将来への不安も募ります。
「仕事も大切だけど、親も大切にしたい」「でも、このままでは自分が倒れてしまう」
そうした板挟みのような気持ちで、一人で抱え込んでいる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、仕事と介護を両立させるためには、工夫と外部のサポートが不可欠です。ご自身を大切にしながら、仕事も介護も続けていくための方法を一緒に考えていきましょう。
時間管理を見直す：介護と仕事の時間を「見える化」する
自営業の強みの一つは、比較的自分で時間をコントロールできることです。しかし、その自由さが、かえって仕事と介護の境界線を曖昧にし、「いつまでも休めない」「常に追われている」という感覚を生み出すこともあります。
まずは、ご自身の1日の過ごし方、1週間のスケジュールを具体的に書き出してみることから始めましょう。介護にかかる時間、仕事の時間、移動時間、そして意外と見落としがちな休憩時間や食事の時間も明確にします。
例えば、
- 親御さんの起床・就寝時間、食事や排泄の介助が必要な時間帯
- 通院やデイサービスの送迎時間
- ご自身の事業で集中して取り組むべき時間（打ち合わせ、作業、事務処理など）
- 通勤時間、休憩時間、食事時間
- 「何もしていない」時間（疲れてただ座っている、ぼーっとしているなど）
これらを書き出すことで、限られた時間の中で、どこにどれくらいの時間を割いているのかが「見える化」されます。そして、「この時間は介護があるから仕事の電話は難しいな」「この移動時間は事務作業にあてられそうだ」といった具体的な時間の使い方のアイデアが生まれやすくなります。
介護サービスを「仕事の時間を作る」視点で活用する
多くの介護サービスは、親御さんの生活を支えるためのものと考えがちです。しかし、見方を変えれば、これらのサービスは「介護にかかる時間を減らし、ご自身の仕事や休息のための時間を作る」ための手段でもあります。
特に自営業の方にとって有効なサービスの例を挙げます。
1. 訪問介護（ホームヘルプ）
- ピンポイントでの時間確保: 親御さんの食事や入浴、排泄介助、服薬確認など、決まった時間に決まった介助が必要な場合に、その時間だけヘルパーさんに来てもらうことで、ご自身はその間、安心して仕事に取り組むことができます。例えば、「午前中の〇時から〇時までは打ち合わせの時間にしたいから、その間だけヘルパーさんにお願いする」といった使い方が考えられます。
- 生活援助の活用: 買い物や調理、掃除といった生活援助を依頼することで、ご自身がそれらの家事に費やしていた時間を仕事に回すことができます。
2. デイサービス（通所介護）
- 日中のまとまった時間: 週に何日かデイサービスを利用してもらうことで、その日は朝から夕方までを仕事や休息の時間にあてることができます。これは自営業で、自宅で仕事をしている方にとって特に有効です。
- 親御さんの日中の活動: 親御さんにとっても、デイサービスで他の利用者さんと交流したり、レクリエーションに参加したりすることは、心身の刺激になり、生活のリズムを整える助けにもなります。
3. ショートステイ（短期入所生活介護）
- 数日間の集中: 数日間から数週間、親御さんに施設に入所してもらうことで、ご自身はまとまった時間を確保できます。普段はなかなかできない、出張や納期が迫っている仕事、あるいは心身のリフレッシュにこの時間を活用できます。計画的に利用することで、ご自身の負担軽減につながります。
これらのサービスを利用するには、まずは要介護認定を受ける必要があります。そして、ケアマネジャーに相談し、親御さんの状態やご自身の状況（自営業であること、仕事のために時間が必要であることなど）を正直に伝え、ケアプランを作成してもらうことが重要です。ケアマネジャーは、利用できるサービスやその組み合わせについて専門的な知識を持っていますので、遠慮なく相談してみましょう。
仕事内容や進め方を調整する
介護の状況に応じて、仕事の進め方自体を見直すことも必要かもしれません。
- 仕事の効率化: 介護の合間に仕事をするには、集中力が求められます。短時間で効率よく作業を進めるためのツールや仕組みを取り入れることを検討しましょう。ただし、新しいアプリやサービスに慣れるのが苦手な場合は、まずはタスクリストを作成したり、作業時間を計測したりといったアナログな方法から始めるのも良いでしょう。
- 外注・業務委託: 可能であれば、一部の業務を外部に委託することも選択肢です。経理や事務作業、専門的な作業などをアウトソーシングすることで、ご自身の負担を軽減し、介護やご自身にしかできない仕事に時間を割けるようになります。
- 顧客や取引先への説明: 介護の状況について、どこまで伝えるかは難しい判断ですが、信頼関係のある顧客や取引先には、状況を正直に伝えることで理解や協力を得られる場合もあります。納期や対応時間について、事前に相談し調整できる柔軟性を持つことが大切です。
- 働き方の柔軟化: 可能であれば、自宅での作業時間を増やしたり、打ち合わせをオンラインに切り替えたりするなど、介護の状況に合わせて働き方をより柔軟にすることも検討しましょう。
一人で抱え込まない：相談と休息の重要性
自営業の方は、良くも悪くも「自分の采配で何とかなる」と考えがちです。しかし、介護は予測不能なことも多く、一人で全てを抱え込もうとすると、必ず限界が来ます。
相談する
- 家族・親族: 配偶者や兄弟姉妹がいる場合、介護の状況や負担について正直に話し合い、役割分担や協力をお願いしてみましょう。
- 地域の相談窓口: 地域包括支援センターや各自治体の介護相談窓口では、介護に関する様々な悩みを無料で相談できます。制度やサービスの情報提供だけでなく、気持ちの整理にも役立ちます。
- ケアマネジャー: 前述の通り、ケアプラン作成だけでなく、日々の介護に関する相談や悩みにも対応してくれます。
- 同じ立場の介護者: 介護者の会やオンラインコミュニティなどで、同じような状況にある人と話すことは、孤独感を和らげ、共感や具体的なアドバイスを得る機会になります。
休息をとる
「休んでいる暇なんてない」と感じるかもしれませんが、休息は介護を続ける上で最も重要と言っても過言ではありません。自営業の場合、意識的に「休む時間」「介護も仕事もしない時間」を作る努力が必要です。
短い時間でも良いので、好きな飲み物を飲む、音楽を聴く、軽い運動をするなど、心身をリラックスさせる時間を作りましょう。ショートステイなどを利用して、数日間完全に介護から離れることも、長期的に見れば必要な投資です。休息は、決して怠惰なことではなく、介護と仕事を継続するための「メンテナンス」なのだと考えてください。
まとめ：あなた自身のことも大切にしながら、少しずつ
自営業と介護の両立は、簡単な道のりではありません。収入への不安、将来への不安、そして何より親御さんのことを思う気持ちと、ご自身の仕事や生活を守りたい気持ちの間で揺れ動くこともあるでしょう。
しかし、忘れないでいただきたいのは、「ケアするあなた自身も大切にされるべき存在である」ということです。あなたが倒れてしまっては、親御さんの介護も、ご自身の事業も成り立ちません。
今回ご紹介した時間管理の工夫やサービス活用、相談や休息といった方法は、どれか一つですべてが解決するものではないかもしれません。ですが、一つずつ、ご自身の状況に合わせて取り入れてみることで、少しずつでも負担を軽減し、心に余裕を持つことができるはずです。
一人で抱え込まず、利用できる制度やサービスは積極的に活用し、周囲に助けを求めることをためらわないでください。そして、何よりもご自身の心と体を大切にしながら、介護を続けていく方法を見つけていってください。応援しています。