忙しい自営業介護者へ。仕事中の親の安心と自分の時間を両立させる方法
仕事と介護、どちらも大切だからこそ直面する悩み
自営業としてご自身の事業を続けながら、高齢の親御さんの介護をされている皆様。毎日お疲れ様です。時間に融通が利きやすい自営業だからこそ、「親のそばにいられる」「急な対応ができる」という良い面がある一方で、仕事と介護の明確な区切りがなく、常に親御さんのことが気になってしまう、急な対応で仕事が中断してしまう、といった難しさも感じていらっしゃるのではないでしょうか。
特に仕事中、「親は今どうしているだろうか」「転んだりしないだろうか」と心配になり、集中できない。会議や作業中に呼び止められる。納期が迫っているのに、病院の付き添いや介護サービスの手配に追われる。そんな状況が続くと、心身ともに疲弊してしまいます。
そして、一番後回しになりがちなのが、ご自身の休息時間やリフレッシュの時間です。「自分の時間なんてとても取れない」そう感じている方も多いかもしれません。
しかし、介護を長く続けていくためには、ご自身の心と体を守ることが何よりも大切です。この記事では、自営業で介護をされている方が、仕事中の親御さんの安心を確保しつつ、ご自身の時間も大切にするための具体的な方法をご紹介します。
仕事中の親御さんの安心をどう確保するか
仕事に集中するためには、まず親御さんが安全に、そして安心して日中を過ごせる環境を整えることが重要です。いくつかの方法を組み合わせてみましょう。
1. 親御さんとのコミュニケーションとルール作り
まずは、親御さんとよく話し合うことから始めましょう。日中の過ごし方、困った時の連絡方法、どうしても仕事に集中したい時間帯があることなどを伝え、協力をお願いしてみます。緊急時の連絡先や対応方法を明確にしておくことも安心につながります。
2. ちょっとした工夫で安全を確保
- 見守りカメラ: 最近は、スマートフォンから手軽に確認できる見守りカメラがあります。複雑な操作は必要なく、設置も簡単なものが多いです。親御さんのプライバシーに配慮しつつ、離れた場所から様子を確認できるだけでも、仕事中の不安を和らげられます。「デジタルは苦手で…」という方でも、シンプルな機能のものを選んだり、設置サービスを利用したりする方法もあります。
- 緊急通報システム: ボタン一つで契約している会社や近所の人に連絡できるシステムです。転倒など万が一の際に、迅速な対応につながります。地域の自治体が高齢者向けに提供している場合もありますので、確認してみましょう。
- 動線の確保と整理整頓: 親御さんがよく移動する場所の障害物を取り除いたり、手すりを設置したりするなど、家の中の安全を物理的に確保する工夫も大切です。
3. 人の手を借りる
自営業の場合、決まった時間に家を空けるのが難しいこともありますが、短時間だけサポートをお願いできるサービスや、近隣の協力も考えられます。
- 地域の助け合いサービスやボランティア: 地域のNPOや社会福祉協議会などが、安価または無料で短時間の見守りや簡単な家事援助を行っている場合があります。
- 親戚や友人、近隣住民との連携: 信頼できる人に事情を話し、仕事で手が離せない時の緊急連絡先になってもらう、たまに様子を見てもらうなど、地域のつながりを頼ることも有効です。
- 介護サービスの活用: 後述しますが、必要な時間だけプロの手を借りることを検討しましょう。
4. 介護サービスの積極的な活用
自営業の柔軟な働き方を活かし、介護サービスをピンポイントで利用するのも賢い方法です。
- 短時間訪問介護: ケアマネジャーに相談し、例えば「午前中の〇時〜〇時まで、親が一人になる時間に安否確認や簡単な介助をお願いする」といった短時間の訪問介護を組み合わせることができます。
- デイサービスの一時利用: 毎日でなくても、週に1~2回、数時間だけデイサービスを利用してみましょう。その時間は親御さんは安全な環境で過ごせ、介護者であるあなたは安心して仕事に集中したり、息抜きしたりできます。
- 配食サービス: 食事の準備は毎日の負担になります。配食サービスを利用すれば、栄養バランスの取れた食事が届けられ、調理や買い物、片付けの時間を減らせます。仕事が忙しい時の強い味方になります。
ケアマネジャーに相談する際は、自営業で仕事の都合があることを具体的に伝え、「この時間帯に手が離せなくなることがある」「この曜日は忙しい」といった状況を共有することが、より柔軟なサービス利用計画につながります。
仕事と介護の時間を「切り分ける」工夫
自営業の場合、仕事場が自宅という方も多く、仕事と介護の境界があいまいになりがちです。意識的に時間を区切る工夫をしてみましょう。
1. 大まかなタイムスケジュールの設定
「この時間は仕事の時間」「この時間は親のケアの時間」「この時間は自分のための時間」というように、大まかで良いので一日の流れを決めてみます。厳密でなくても構いません。例えば、「午前中の〇時〜〇時は、親が落ち着いていることが多いから、集中して事務作業をする時間にする」のように、メリハリをつける意識を持つことが大切です。
2. 短時間でも「自分のため」の時間を確保
たとえ15分でも30分でも構いません。意識的に「介護でも仕事でもない自分の時間」を作りましょう。 * コーヒーをゆっくり飲む * 好きな音楽を聴く * 短いウォーキングに出かける * 雑誌を読む この短い時間が、気持ちを切り替え、心身の疲労回復につながります。
3. 介護サービスによる「まとまった時間」の確保
週に一度のデイサービス利用日や、数日間のショートステイ利用日は、介護から完全に離れることができる貴重な時間です。この時間を「仕事の集中タイム」にするのも良いですし、「自分の休息・リフレッシュタイム」として美術館に行ったり、友人とお茶をしたり、一人でのんびり過ごしたりするのも非常に大切です。
ショートステイは、親御さんの状態によっては慣れるまで時間がかかる場合もありますが、介護者にとっては心身をリセットするための有効な手段です。ケアマネジャーと相談しながら、まずは短い期間から試してみるのも良いでしょう。
4. 「完璧な介護」を目指さない
自営業で仕事も抱えながらの介護は、物理的に限界があります。全てを完璧にこなそうとすると、ご自身が潰れてしまいます。「今日はこれができれば良しとしよう」「この部分はサービスに任せよう」と、適度に力を抜くことも必要です。自分自身に「完璧でなくても大丈夫だよ」と許可を出してあげてください。
抱え込まず、誰かに相談する勇気
自営業で孤立しがちな状況だからこそ、一人で抱え込まずに相談することが重要です。 * 地域の地域包括支援センター: 介護に関する総合的な相談窓口です。様々な制度やサービスについて教えてもらえます。 * 担当のケアマネジャー: 介護保険サービスの利用調整だけでなく、日々の困りごとや介護の進め方についても相談に乗ってくれます。 * 同じ立場の介護者仲間: 地域の介護者の会やインターネット上のコミュニティなどで、悩みを共有したり、情報交換をしたりするのも有効です。「自分だけじゃない」と感じるだけでも心が軽くなります。
まとめ:ご自身のケアがあってこそ、介護は続けられます
自営業として働きながらの介護は、時間的、精神的な負担が大きくなりがちです。仕事中の親御さんの安心を確保するために、コミュニケーション、安全確保の工夫、そして様々なサービスや周囲の手を借りることをためらわないでください。
そして、何よりも大切なのは、仕事と介護の間に意識的に境界線を引き、ご自身の休息やリフレッシュの時間を確保することです。それは決して「手抜き」ではなく、介護を長く、そして前向きに続けていくために必要不可欠な「自分のケア」です。
完璧を目指さず、できることから一つずつ試してみてください。自分自身を大切にしながら、親御さんとご自身の生活を守っていきましょう。あなたは一人ではありません。