介護保険ではカバーできない「隙間」を埋める。自営業介護者のための介護保険外サービス活用術
介護保険サービスだけでは足りない負担を感じていませんか?
日々の介護、本当にお疲れ様です。特に自営業の方は、仕事と介護の板挟みになり、自分の時間や休息を確保することが非常に難しいことと思います。介護保険サービスを利用していても、「もう少して助けが欲しい」「この時間だけ誰かにいてくれたら」と感じる場面はありませんか?
介護保険サービスは、認定された要介護度に応じて利用できる内容や時間に限りがあります。そのため、例えば以下のような「ちょっとした困りごと」や「決まった時間以外のサポート」に対応しきれない場合があります。
- 食事の準備や買い物などの家事援助をもっと頻繁に利用したい
- 病院への付き添いや、役所への手続きに同行してほしい
- 話し相手や見守りをしてくれる時間が必要
- 家族の急な外出時に短時間だけ見守ってほしい
- 介護保険の対象外となる家事(庭の手入れやペットの世話など)をお願いしたい
このような、介護保険サービスでは賄えない「隙間」を埋めるのに役立つのが、「介護保険外サービス」です。新しいサービスの情報収集に苦手意識がある方もいらっしゃるかもしれませんが、ご自身の負担を減らし、大切な仕事や休息の時間を確保するために、ぜひ知っていただきたい選択肢です。
介護保険外サービスとは?介護保険サービスとの違い
介護保険外サービスとは、その名の通り、介護保険制度の対象とならないサービス全般を指します。公的な制度である介護保険サービスとは異なり、提供事業者やサービス内容、費用は多様です。
主な違いは以下の通りです。
- 費用の負担: 介護保険サービスは原則1割(所得に応じて2〜3割)の自己負担ですが、介護保険外サービスは全額自己負担です。
- 利用の条件: 介護保険サービスは要介護(要支援)認定が必要ですが、介護保険外サービスは認定の有無に関わらず利用できます。
- サービス内容: 介護保険サービスは居宅サービス計画(ケアプラン)に基づいて提供される範囲が決まっていますが、介護保険外サービスは提供事業者との契約に基づき、様々な内容で利用できます。
例えば、同じ「ヘルパーによる支援」であっても、介護保険の訪問介護では、身体介護(食事、入浴、排泄などの介助)や生活援助(一般的な掃除、洗濯、調理など、本人の日常生活に必要な範囲の援助)に限定されます。しかし、介護保険外サービスであれば、より柔軟な時間設定や、介護保険では認められない範囲のサービス(例えば、家族のための食事作りや、普段使わない部屋の掃除、庭の草むしりなど)も依頼できる場合があります。
自営業介護者が介護保険外サービスを活用するメリット
時間管理が特に難しい自営業の方にとって、介護保険外サービスは強い味方となり得ます。
- 柔軟な時間設定: 介護保険サービスは事業所やヘルパーのシフトによって利用時間が限られることがありますが、保険外サービスは比較的柔軟な時間帯で依頼できる場合があります。「この打ち合わせの間だけ」「急な出張が入ったときだけ」など、ピンポイントのニーズに対応しやすいのが特徴です。
- 必要なサービスをオーダーメイド: 介護保険の範囲を超えて、「郵便物を取りに行ってもらう」「離れて暮らす家族に連絡してもらう」「話し相手になってもらう」など、個別の困りごとに合わせたサービスを依頼できます。
- 仕事との両立をサポート: 介護に取られていた時間をサービスに任せることで、仕事に集中したり、顧客とのアポイントメントを確保したりすることが可能になります。
- 精神的なゆとり: 介護負担の一部を外部に委ねることで、ご自身の心身の疲労を軽減し、精神的なゆとりを取り戻すことにつながります。
どんな介護保険外サービスがある?具体的な例
介護保険外サービスは多岐にわたりますが、主に以下のような種類があります。
- 家事代行サービス: 食事の準備、掃除、洗濯、買い物など、日常的な家事を代行します。介護保険の生活援助では対象外となる範囲の家事も依頼できる場合があります。
- 付き添い・外出支援サービス: 病院の受診や、役所での手続き、銀行での用事、美容院、友人との外出などに付き添います。公共交通機関の利用支援なども含まれます。
- 見守り・話し相手サービス: 安否確認のための訪問や電話、孤独感を和らげるための話し相手などを提供します。認知症の方の見守りサービスもあります。
- 移送サービス: 車椅子のまま乗降できる福祉車両などで、自宅から目的地(病院、施設、駅など)まで送迎します。
- 自費リハビリテーション: 介護保険の範囲を超えて、集中的なリハビリを提供します。専門的な技術を持つ理学療法士などが担当することが多いです。
- 配食サービス: 高齢者向けの栄養バランスの取れた食事を自宅に配達します。安否確認を兼ねているサービスもあります。
- 看護師による自費サービス: 医療処置や体調管理など、訪問看護ステーションが介護保険や医療保険の枠を超えて提供するサービスです。
これらのサービスは、個々のニーズや状況に合わせて組み合わせて利用することができます。
介護保険外サービスの上手な探し方・選び方
新しいサービスを探したり、複数の事業者を比較したりするのは大変だと感じるかもしれません。情報収集が苦手な方向けに、いくつかの方法をご紹介します。
- ケアマネジャーに相談する: まずは担当のケアマネジャーに相談してみましょう。地域の介護保険外サービスに関する情報を持っている場合があります。介護保険サービスと組み合わせた提案をしてくれることもあります。
- 地域包括支援センターに相談する: 地域の高齢者の暮らしを支える総合窓口です。介護に関する様々な相談に対応しており、介護保険外サービスの情報提供や事業者との橋渡しをしてくれることがあります。
- インターネットで検索する: 「(お住まいの地域名) 介護保険外サービス」「(お住まいの地域名) 家事代行 高齢者」といったキーワードで検索すると、地元の事業者や全国展開している事業者の情報が見つかります。ただし、情報量が多いため、信頼できる事業者を見分ける必要があります。
- 民間の紹介サービスを利用する: 高齢者向けの様々なサービスを紹介・比較するウェブサイトや電話相談窓口があります。複数の事業者の情報や料金をまとめて比較検討できます。
- 事業者のウェブサイトやパンフレットを確認する: 興味を持った事業者のウェブサイトでサービス内容、料金体系、利用者の声などを確認しましょう。資料請求をしたり、電話で問い合わせてみるのも良い方法です。
- 可能であれば、無料相談や体験サービスを利用する: 一部の事業者は、契約前に無料相談や short-time の体験サービスを提供しています。実際にサービスを試してみることで、内容や担当者との相性を確認できます。
事業者を選ぶ際は、料金だけでなく、サービスの質、担当者との相性、緊急時の対応体制なども考慮することが重要です。複数の事業者から見積もりを取り、比較検討することをお勧めします。
利用する際の注意点
介護保険外サービスを利用するにあたって、いくつか注意しておきたい点があります。
- 費用: 全額自己負担となるため、費用は重要な検討要素です。サービス内容や時間によって料金が異なりますので、事前に明確な料金体系を確認し、見積もりを取りましょう。
- 契約内容: サービス内容、料金、利用日時、キャンセルの規定などを十分に理解した上で契約を結びましょう。不明な点は遠慮なく事業者に質問することが大切です。
- 事業者選び: 信頼できる事業者を選ぶことが最も重要です。実績、口コミ、料金の透明性、担当者の対応などを総合的に判断しましょう。可能であれば、第三者機関の認証や、地域での評判なども参考にすると良いでしょう。
- ケアマネジャーとの連携: 介護保険サービスと介護保険外サービスを組み合わせて利用する場合は、ケアマネジャーに情報共有し、全体のケアプランと整合性が取れるように調整してもらうとスムーズです。
介護保険外サービス活用事例
例えば、以下のような活用が考えられます。
- 自営業で午前中に集中して仕事したいAさんの場合: 週2回午前中の決まった時間に、見守り兼話し相手サービスの利用を依頼。その間は安心して仕事に集中でき、お昼ご飯の準備もお願いすることで負担を軽減。
- 親の通院が増えてきたBさんの場合: 介護保険の範囲では通院介助が足りないため、週1回または必要な時に応じて、付き添い・外出支援サービスを利用。運転や付き添いの負担が減り、自身の疲労が軽減。
- 買い物が難しくなってきたCさんの場合: 配食サービスを週数回利用し、栄養バランスの取れた食事を確保。これまでは仕事の合間に慌てて買い物に行っていたが、その時間がなくなり心身の負担が軽減。
これらのように、介護保険外サービスを上手に活用することで、日々の介護の負担を具体的に減らし、ご自身の時間やエネルギーを守ることができます。
まとめ:ご自身の「ケアする時間」を大切に
介護は長期にわたることが多く、頑張りすぎると心身のバランスを崩してしまうことがあります。「誰かにもっと手伝ってほしい」と感じたら、それは自然なサインです。一人で抱え込まず、介護保険外サービスのような外部の力を借りることを検討してみてください。
新しいサービスを探すのは億劫に感じるかもしれませんが、ご紹介したようにケアマネジャーや地域包括支援センターに相談することから始めても良いですし、情報収集が苦手なら民間の紹介サービスを利用するのも一つの方法です。少しの勇気を持って情報を集めるだけで、日々の負担を大きく軽減できる可能性があります。
ご自身の心と体を大切にすることは、結果的に介護の継続にもつながります。介護保険外サービスを賢く活用して、「ケアする私」のための時間とゆとりをしっかりと確保しましょう。