毎日の介護をラクに。家の中の「ちょっとした工夫」で負担を減らす方法
介護の日々、家の中での負担を感じていませんか
日々の介護、本当にお疲れ様です。特に、お家の中での移動や着替え、入浴といった場面で、親御さんを支えるたびに体への負担を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。慣れてきたとはいえ、毎日のこととなると、やはり体にこたえます。
「自分の時間も十分に取れない中で、どうにか今の状況を少しでも楽にしたい」そうお考えになっているかもしれません。大がかりなリフォームは難しい、どこから手をつければいいか分からない、そんな風に感じている方もいらっしゃるかと思います。
しかし、実は家の中のほんの「ちょっとした工夫」で、日々の介護の負担を意外なほど減らすことができる場合があります。今回は、大掛かりな工事をすることなく、比較的簡単に試せる家の中での負担軽減アイデアをご紹介します。ご自身の体も大切にしながら、介護を続けるためのヒントとして、ぜひご活用ください。
移動をラクにするための工夫
家の中での移動は、転倒リスクも伴い、介護者・要介護者双方にとって気を遣う場面です。少しの工夫で、より安全でスムーズな移動をサポートできます。
1. 動線を確保する
家の中の家具の配置を見直してみましょう。親御さんがよく通る場所(寝室からトイレ、リビングなど)の通り道を広く確保するだけで、移動が格段に楽になります。床に物を置かないことは基本ですが、少しの段差やコードなどもつまずきの原因になりますので、整理整頓を心がけましょう。
2. 手すりを活用する
本格的な手すりの設置は工事が必要ですが、簡易的に設置できるタイプの手すりも多くあります。例えば、ベッドからの立ち上がりをサポートするもの、トイレに置くだけの手すりなどです。玄関や廊下など、特につまずきやすい場所やバランスを崩しやすい場所に、必要に応じて検討してみてください。突っ張り棒タイプや吸盤タイプの製品もありますが、安全性を十分に確認し、しっかりと固定できるものを選ぶことが重要です。
3. 滑り止め対策を行う
フローリングや段差、浴室などは滑りやすく危険が伴います。移動する場所に滑り止めマットやカーペットを敷くことで、転倒のリスクを減らすことができます。特に、廊下や階段の昇降口、浴室の洗い場や浴槽内などは滑り止め効果のあるマットを検討しましょう。
4. 明るさを確保する
足元が見えにくいと、つまずきや転倒につながりやすくなります。廊下や階段、トイレなど、暗くなりがちな場所には補助照明を設置したり、電球を明るいものに変えたりするだけで、安全性が向上します。自動点灯するセンサーライトなども便利です。
介助の負担を減らすための工夫
介助そのものの体の負担を軽減するためには、適切な福祉用具の活用や、少しの工夫が役立ちます。
1. 立ち上がりや移乗を助ける用具
椅子やベッドからの立ち上がり、車椅子への移乗など、体の向きを変えたり体重を支えたりする場面は、介護者の体に大きな負担がかかります。 * 立ち上がり補助手すり: 椅子の横やベッドサイドに置くだけで、自分で立ち上がる際の支えになります。 * 移乗用シート/ボード: 座面の下に敷いて滑りやすくすることで、体の向きを変えたり、隣の椅子やベッドに移ったりするのを助けます。介助する側も、無理な体勢をせずに済みます。
これらは比較的手軽に導入できるものがあります。介護保険が適用される場合もありますので、ケアマネジャーに相談してみるのも良いでしょう。
2. 入浴介助を楽にする
浴室は特に滑りやすく、介助が大変な場所です。 * シャワーチェア: 座って洗えるため、バランスを崩しにくく、介助する側も楽な姿勢で洗うことができます。 * バスボード: 浴槽の縁に渡し、一度座ってから浴槽に入ることで、またぐ動作の負担を減らせます。 * 滑り止めマット: 浴槽の底や洗い場に敷くことで、滑りを防止します。
これらの用具も介護保険レンタルや購入の対象となる場合があります。
3. 衣類や寝具の工夫
着脱しやすい衣類や、体に負担をかけない寝具を選ぶことも、日々の介助負担軽減につながります。 * 着脱しやすい衣類: 前開きでボタンやファスナーが大きいもの、マジックテープで留められるものなど、自分で着替えやすい工夫がされた衣類は、介助が必要な場合でも負担が減ります。 * 体圧分散マットレス: 寝たきりの方や、寝ている時間が長い方の床ずれ予防だけでなく、体の向きを変える体位変換の介助負担軽減にもつながります。
整理整頓と安全確保の重要性
家の中を整理整頓し、安全な環境を保つことは、事故を防ぐだけでなく、日々の介護の効率化にもつながります。
- 不要な物を減らす: 使っていない家具や物が多いと、部屋が狭くなり、移動の邪魔になったり、埃が溜まりやすくなったりします。思い切って不要な物を減らすだけで、掃除や移動が楽になります。
- よく使う物を手の届く範囲に置く: リモコン、眼鏡、飲み物など、親御さんが日常的によく使う物を、ベッドサイドや椅子に座ったまま手の届く範囲に置いておくと、自分でできることが増え、介助の回数を減らせる可能性があります。
どこに相談すれば良い?
「具体的にどんな工夫が良いのか分からない」「自分の家にはどんなものが合うのか」といった疑問がある場合は、一人で抱え込まずに専門家に相談してみましょう。
- ケアマネジャー: 担当のケアマネジャーがいれば、まずは相談してみてください。親御さんの状態や生活環境に合わせて、適切な福祉用具や住宅改修のアドバイスをしてくれます。介護保険サービスの利用についても相談できます。
- 地域包括支援センター: ケアマネジャーがいない場合や、介護保険の申請前でも、地域包括支援センターに相談できます。地域の様々な相談窓口やサービスについて情報提供してくれます。
- 福祉用具専門相談員: 福祉用具を取り扱う事業所には、福祉用具専門相談員という専門家がいます。実際に自宅に来てもらい、本人や家の状況に合った用具を選んでもらうことができます。介護保険を利用して福祉用具をレンタル・購入する際にも関わります。
こうした専門家は、多くの高齢者やそのご家族の状況を見てきています。情報収集が苦手だと感じている方も、まずは電話で問い合わせてみることから始めてみてはいかがでしょうか。
小さな工夫の積み重ねが、あなた自身の休息につながる
今回ご紹介した工夫は、どれも比較的手軽に始められるものばかりです。全てを一度に行う必要はありません。今の介護で特に負担に感じている場面を一つ選んで、そこから少しずつ改善を図ってみましょう。
家の中の環境を整えることは、親御さんの安全や自立を促すだけでなく、介護しているあなた自身の体の負担を直接的に軽減することにつながります。介護者の体が壊れてしまっては、介護を続けること自体が難しくなってしまいます。
どうぞご自身の体と心を大切にしてください。少しの工夫と、そして時にはプロの手を借りながら、あなた自身の休息と健康を守っていくことを忘れないでください。