介護中でも自分の体は大切に。健康診断や通院を確保する具体的な方法
介護の日々、本当にお疲れ様です。大切なご家族のために、毎日一生懸命ケアをされていることと存じます。朝起きてから夜寝るまで、親御さんのことが常に頭にあり、ご自身のことは後回しになっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に、自営業で仕事と介護の両立をされている場合、時間のやりくりは大きな課題です。仕事の納期や締め切り、そして親御さんのケア。その間で、ご自身の健康診断や、ちょっとした体の不調を感じた時の通院の時間を確保するのは、至難の業かもしれません。
しかし、忘れないでいただきたいのは、介護は長期戦であるということです。そして、その長期戦を乗り切るためには、介護を「する側」であるあなた自身の心と体が健康であることが、何よりも重要になります。ご自身の健康がおろそかになってしまうと、介護を続けることが難しくなるだけでなく、親御さんにも心配をかけてしまうことになりかねません。
この記事では、忙しい介護者の皆様が、ご自身の健康診断や通院の時間を確保するための具体的な方法や、役立つ情報をお伝えします。自分を大切にしながら、無理なく介護を続けていくためのヒントとして、お役立ていただければ幸いです。
なぜ介護者が自分の健康管理をする必要があるのか
「自分のことより、まずは親のケアを」そう考えるのは、ご家族を思う優しい気持ちからでしょう。しかし、介護者が倒れてしまっては、元も子もありません。ご自身の健康管理は、介護を続ける上で必要不可欠な「投資」と考えてみてください。
- 介護の継続性: あなたが健康であればこそ、安定した介護を続けることができます。体調を崩してしまえば、親御さんのケアができなくなり、新たな問題が生じてしまいます。
- 質の高い介護: 体調が良く、心に余裕があれば、より穏やかに、より丁寧なケアを行うことができます。反対に、心身が疲弊していると、イライラしたり、不注意になったりするリスクが高まります。
- 親御さんの安心: 親御さんも、あなたに無理をしてほしくないと思っています。あなたが元気でいることが、親御さんにとって最大の安心となることもあります。
- ご自身の将来への備え: 介護が終わった後のご自身の人生のためにも、健康寿命を延ばし、活動的に過ごせる体を維持することは重要です。
見逃しがちな自分の体からのサイン
「これくらい大丈夫」「もう少ししたら落ち着くから」そう思って、ご自身の体からのサインを見逃していませんか? 忙しさの中で、つい軽く考えてしまいがちなサインには、以下のようなものがあります。
- 慢性的な疲労感、だるさ
- 肩こり、腰痛、関節痛などの体の痛み
- 十分な睡眠が取れない、寝ても疲れが取れない
- 食欲がない、あるいは食べ過ぎてしまう
- 胃もたれや胸やけなどの消化器症状
- 頭痛やめまい
- 風邪をひきやすい、治りにくい
- 気分が落ち込む、イライラしやすい、不安感が強い
これらのサインは、体が休息やケアを求めている証拠です。早めに気づき、対処することが、大きな病気を防ぐことにつながります。
忙しい介護者が健康診断・通院の時間を確保するための具体的な工夫
分かってはいるけれど、どうやって時間を確保すればいいのか分からない。そう感じている方も多いでしょう。ここでは、具体的な方法をいくつかご紹介します。
1. 介護サービスの計画的な活用
介護保険サービスや介護保険外サービスは、親御さんのケアのためだけでなく、介護者自身が休息したり、自分の用事を済ませたりするためにも利用できます。
- デイサービスやショートステイの利用:
- 健康診断や定期的な通院が必要な日時に合わせて、親御さんにデイサービスを利用していただく、あるいは数日間のショートステイを計画する。
- ケアマネジャーと相談し、年間スケジュールの中に、ご自身の健康診断や通院のためのサービス利用日をあらかじめ組み込んでもらうことも可能です。
- 訪問介護の利用:
- 受診する時間帯だけ、訪問介護サービスに入ってもらい、親御さんの見守りや安否確認をお願いする。
- 身体介護だけでなく、生活援助(掃除、洗濯、調理など)を依頼することで、ご自身の準備時間を確保したり、受診後の負担を減らしたりすることもできます。
- 介護保険外サービスの利用:
- 介護保険の対象外となる一時的な見守りや外出の付き添いを、自費サービスとして提供している事業者に依頼する。例えば、あなたが病院に行っている間だけ、親御さんの話し相手や簡単な身の回りの世話をお願いするといった利用方法があります。
2. 時間管理とスケジューリングの工夫
介護と仕事の合間を縫って時間を確保するための具体的な工夫です。
- 「自分のための時間」を先にブロックする:
- 健康診断の予約や通院が必要になったら、まずはその日時のスケジュールを確定し、他の予定よりも優先して書き込みます。
- 仕事や介護のスケジュールを組む際に、あらかじめ「この日は自分の通院予備日」などと設定しておくのも良い方法です。
- 受診日の前後の準備と手配:
- 受診日には、親御さんの食事や服薬の準備、必要な連絡先リストなどを事前にまとめておくと、当日慌てずに済みます。
- 親御さんに付き添いが必要な場合は、家族や他の協力者と事前に調整します。すぐに協力が得られない場合でも、可能性を諦めずに相談してみることも大切です。
- 医療機関選びも考慮に入れる:
- 予約制を導入している医療機関を選ぶと、待ち時間を予測しやすくなります。
- 可能であれば、比較的空いている時間帯(例えば午前中の早い時間や午後の遅い時間など)を狙って予約するのも一つの手です。
- かかりつけ医に、介護中のため時間の制約があることを伝えておくと、配慮してもらえる場合もあります。
3. 情報収集と相談
一人で抱え込まず、専門家や地域の支援を活用しましょう。
- ケアマネジャーへの相談:
- 担当のケアマネジャーに、ご自身の健康診断や通院のためにサービスを利用したい旨を正直に相談してみましょう。サービス担当者会議などで、関係者間で情報共有し、調整してもらうことも可能です。
- 地域包括支援センターへの相談:
- 介護保険の申請をしていない場合でも、地域包括支援センターに相談できます。利用できる地域のサービスや、介護者の健康に関する相談窓口などを案内してもらえる場合があります。
- かかりつけ医への相談:
- ご自身の体調について、かかりつけ医に相談する際に、介護をしている状況や日々の負担について伝えてみましょう。医師があなたの健康状態をより正確に把握し、適切なアドバイスやサポートを提供してくれることがあります。
受診時に医療機関に伝えておきたいこと
せっかく時間を作って医療機関を受診するのですから、ご自身の健康状態を正確に伝えることが重要です。特に介護者の場合、日々の生活習慣が大きく影響している可能性があるため、以下の点を伝えておくと良いでしょう。
- 介護をしている状況: 誰を、どのような状態で介護しているか。介護歴はどのくらいか。
- 日々の介護内容: どのようなケアを主に担当しているか(身体介護、生活援助、見守りなど)。
- 睡眠時間と睡眠の質: どのくらい眠れているか、夜間に何度も起きる必要があるか。
- 食事の状況: 規則正しく食事が取れているか、簡単なもので済ませていないか。
- 体の負担: どのような時に体の痛みや疲れを感じるか。
- 精神的な状態: ストレスを感じているか、落ち込んだり不安になったりすることが多いか。
これらの情報は、医師があなたの症状の原因を探ったり、適切な治療法や生活上のアドバイスを提供したりする上で、非常に役立ちます。
まとめ
介護は、時に想像以上の体力と精神力を必要とします。大切な親御さんを支えるためには、まずあなた自身が健康であることが欠かせません。ご自身の健康診断や通院の時間を確保することは、決してわがままやぜいたくではなく、介護を継続するための必要不可欠なセルフケアです。
忙しい毎日の中で時間を捻出するのは大変なことですが、ご紹介したように、介護サービスを計画的に利用したり、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談したりと、様々な方法があります。一人で抱え込まず、利用できる支援は積極的に活用しましょう。
あなたの心と体が健やかであることこそが、親御さんにとっても、あなた自身にとっても、最も大切なことです。ご自身のケアを後回しにせず、「ケアする私も大切に」という気持ちを持って、ご自身の健康と向き合う時間を作っていただけることを願っています。
応援しています。