介護記録、何を書けばいい?忙しい毎日でも負担にならない続け方
日々の介護、記録は負担になっていませんか?
高齢のご家族を支える毎日、本当にお疲れ様です。介護サービスを利用されている方はもちろん、そうでない方も、日々のちょっとした変化や出来事を記録しておくと良いと言われます。確かに、体調の変化を把握したり、ケアマネジャーさんや他のご家族に状況を伝えたりする上で、記録は役立ちます。
しかし、分かってはいても、記録をつけることは決して楽な作業ではありません。「今日も記録できなかった…」「何を書けばいいか分からない」と、記録が負担になり、かえってストレスになってしまうこともあるのではないでしょうか。特に自営業で時間に追われている方にとっては、記録の時間を確保すること自体が一苦労かもしれません。
この記事では、日々の介護でお疲れのあなたが、無理なく続けられる介護記録のヒントをお伝えします。「完璧な記録」ではなく、「あなたの介護が少しでも楽になる記録」を目指し、具体的な方法をご紹介します。
なぜ介護記録は大切なのでしょうか?
まず、改めて介護記録がなぜ大切なのかを考えてみましょう。目的が分かれば、どこに重点を置いて記録すれば良いかが見えてきます。
- 正確な情報共有のため: ケアマネジャー、医師、訪問看護師、ヘルパーなど、多職種で連携して介護を支える場合、日々の記録は状況を共有する上で非常に重要です。サービス内容の検討や変更、体調急変時の対応にも役立ちます。
- 体調や変化の把握: 日々の記録を振り返ることで、ご家族の体調や気分、生活習慣の変化に気づきやすくなります。「そういえば先週から食欲がないな」「この時間帯に落ち着きがなくなることが多いな」といった発見が、病気の早期発見やケア方法の見直しにつながることがあります。
- 客観的な状況説明: 万が一、予期せぬ事故やトラブルが発生した場合、記録があると当時の状況を客観的に説明できます。
- ご自身の振り返りと心の整理: 記録は、ご自身の介護の歩みを振り返る大切なツールにもなります。「こんな大変な日もあったけど、乗り越えてきたな」と、ご自身の頑張りを認めたり、心の整理をつけたりすることにも繋がります。
これらの目的をすべて完璧に満たそうとすると、確かに負担が大きくなります。まずは「何のために記録したいのか」を一番大切にしたい目的に絞り込むと、記録する内容や頻度も変わってきます。
介護記録の負担を減らすための3つの考え方
記録を継続するために最も大切なのは、「負担にならないこと」です。以下の3つの考え方を意識してみましょう。
- 「完璧」を目指さない: 毎日、事細かに記録する必要はありません。体調の変化があった日や、サービスを利用した日など、ポイントを絞っても良いのです。「書けなかった日があっても大丈夫」と自分に許可を出しましょう。
- 目的を明確にする: 上記の「なぜ記録が大切か」を踏まえ、「体調の変化に気づくため」「サービス利用時の状況を伝えるため」など、ご自身にとって最も重要な目的を一つか二つ決めましょう。目的に合わせて、記録する項目を絞り込むことができます。
- 続けやすさを最優先する: どんなに素晴らしい記録方法でも、続けられなければ意味がありません。ご自身のライフスタイルや、使い慣れたツールに合わせて、最も手軽にできる方法を選びましょう。
忙しいあなたでも続けられる!具体的な介護記録の方法
「新しいアプリを使うのはちょっと苦手…」という方でも、身近なツールを使って手軽に記録する方法はたくさんあります。
方法1:手書きメモを活用する
最もシンプルで、すぐに始められる方法です。
- 準備するもの: ノート(A5サイズなどが持ち運びやすい)、手帳、またはメモ帳。書きやすいペン。
- 書き方:
- ノートの見開きを1日分として使う、手帳のその日の欄に書き込むなど、フォーマットは自由です。
- 日付と時間をまず書きます。
- 内容は箇条書きで簡潔に。
- 例:「10:00 訪問看護師さん来訪。バイタル問題なし。足のむくみについて相談。」「14:00 食事(昼)完食。その後少し眠そう。」「20:00 熱37.5度。少しだるそうにしている。」
- 続けるヒント:
- 記録する場所(リビングのテーブルの上、寝室の枕元など)を決めておき、すぐに手に取れるようにする。
- 「寝る前に5分だけ」「サービス利用後すぐに」など、記録するタイミングを決めて習慣にする。
- 余計なことは書かず、本当に必要なことだけを書く勇気を持つ。
方法2:スマートフォンのメモ機能や音声入力を利用する
いつも持ち歩いているスマートフォンを活用する方法です。特別なアプリをインストールする必要はありません。
- 使い方:
- iPhoneなら「メモ」、Androidなら「Keepメモ」など、標準搭載されているメモアプリを使います。
- 新しいメモを作成し、日付や時間を入れ、気になったことをテキストで入力します。
- 音声入力機能を活用すれば、手が離せない時でも話しかけるだけでテキストに変換してくれます。これは時間がない時に非常に便利です。
- 必要であれば、写真を添付することもできます(例:発疹が出た場所、食欲がない時の食事)。
- 続けるヒント:
- メモアプリをスマートフォンのホーム画面など、すぐに開ける場所に置く。
- 定型文(例:「【日付】 【時間】 体調:」「食事:」)を登録しておき、入力の手間を減らす。
- 音声入力に慣れておく。
方法3:簡単なPCファイルを利用する
普段からPCを使う機会が多い方におすすめです。
- 使い方:
- Microsoft WordやExcel、Googleドキュメント、スプレッドシートなどで簡単なファイルを作成します。
- 日付、時間、項目(体調、食事、排泄など)の列を作ったシンプルな表形式にすると入力しやすいでしょう。
- PCでの作業の合間や、一日を終えた最後にまとめて入力します。
- 続けるヒント:
- 複雑な関数やデザインは一切不要です。入力しやすいシンプルな形式が一番です。
- ファイル名は分かりやすく管理する(例:「2024年4月 介護記録」)。
- ファイルを開きやすい場所に保存しておく。
方法4:既存のコミュニケーションツールを活用する
既に家族や他の関係者とLINEやメールなどで連絡を取り合っている場合、そのやり取り自体を記録として活用することもできます。
- 使い方:
- 介護に関するグループLINEを作成し、そこで情報共有を兼ねて記録を投稿する。
- 体調の変化や、特に伝えたいことは、後で見返しやすくするために重要なメッセージとしてマークしたり、ノート機能にまとめたりする。
- 続けるヒント:
- グループ内のルール(例:記録は体調に関することに絞る、連絡事項と区別する)を決めておくと混乱しにくいです。
- 情報が流れてしまいやすいので、重要な内容は定期的にまとめ直す工夫も必要かもしれません。
何を記録すればいい?最低限押さえたいポイント
「何を書けばいいか分からない」と迷う場合は、まずは以下の最低限の項目を意識してみましょう。
- 日時: いつ、その出来事が起こったか。
- 体調: 熱、血圧、顔色、元気がない、ぐったりしているなど、いつもと違う様子や気になる点。
- 食事: 食欲の有無、食べた量(完食、半分など)、何か特定のものを食べたか。
- 排泄: 排便・排尿の回数や、いつもと違う状態(下痢、便秘など)。
- 気分・言動: 不安そう、イライラしている、楽しそう、いつもと違う発言があったなど。
- 医療・介護サービス利用時の特記事項: 訪問看護師さんやヘルパーさんから伝えられたこと、健康状態について特に気になる点。
これらの項目についても、毎日全てを記録する必要はありません。変化があった時や、気になることがあった時に絞っても大丈夫です。
記録が続かない時の「やめる勇気」も大切
もし、色々な方法を試しても記録が続かない、または記録すること自体が大きなストレスになっている場合は、一度立ち止まって考えてみましょう。
記録は、より良い介護をするための「手段」であり、「目的」ではありません。記録すること自体が負担になり、ご自身の心身をすり減らしてしまうのであれば、本末転倒です。
「記録しなきゃ」という義務感から一度離れ、記録の頻度を減らしたり、項目をさらに絞ったり、「体調が特に悪い時だけ書く」と決めたりするのも一つの方法です。あるいは、思い切って記録を一時的に中断するという選択肢もあります。
大切なのは、あなたが無理なく、ご自身も大切にしながら介護を続けることです。「記録できなかった」と自分を責める必要は全くありません。
まとめ:記録はあなたのペースで、ご自身を大切に
介護記録は、ご家族のケアや多職種連携に役立つツールですが、同時に介護者の負担にもなりがちです。
完璧な記録を目指すのではなく、「何のために記録するのか」という目的を明確にし、ご自身のライフスタイルや使いやすさに合わせた方法を選び、無理なく続けられることを最優先しましょう。手書きメモ、スマートフォンの標準機能、簡単なPCファイルなど、身近なツールでも十分に記録は可能です。
そして何より大切なのは、記録が負担になっている自分に気づき、「やめる勇気」や「手を抜く勇気」を持つことです。記録はあくまであなたの介護を支えるもの。記録に追われて、ご自身の心や体が疲れてしまわないように、ペースを調整してください。
一人で抱え込まず、必要であればケアマネジャーさんや地域の相談窓口に「記録が負担になっている」と相談してみるのも良いでしょう。きっと、あなたに合った負担の少ない方法を一緒に考えてくれるはずです。
この情報が、日々の介護に追われるあなたの負担を少しでも軽くするヒントになれば幸いです。ご自身を大切にすることを忘れずに、どうかご無理なさらないでください。