忙しいあなたへ。訪問介護とデイサービスで介護の負担を減らし、自分を守るヒント
毎日の介護、本当にお疲れ様です。
親御さんのために尽くす日々の中で、ご自身の心や体を休める時間は十分に取れているでしょうか。気づかないうちに疲労が溜まり、それでも「自分がやらなくては」と頑張り続けている方もいらっしゃるかもしれません。
訪問介護やデイサービスといった介護サービスの名前は知っていても、「手続きが難しそう」「どんな時に利用できるの?」「自分の親には合わないのでは…」といった疑問や不安から、利用に踏み切れていないという声もよく聞かれます。
しかし、これらのサービスは、介護される方だけでなく、介護する方の負担を減らし、自分自身の生活や健康を守るための大きな助けとなります。サービスを上手に活用することは、決して「手抜き」ではなく、介護を長く続けるために必要な、賢明な選択なのです。
この記事では、訪問介護とデイサービスがどのようなサービスなのか、具体的にどのように活用できるのか、そして利用への第一歩を踏み出すためのヒントをご紹介します。
訪問介護とは?自宅での生活をサポートするサービス
訪問介護は、ヘルパーが利用者の自宅を訪問し、日常生活のサポートを行うサービスです。主に「身体介護」と「生活援助」の二つに分けられます。
- 身体介護: 食事、入浴、排泄の介助、着替え、服薬介助、体位変換など、利用者の体に直接触れて行う介助です。専門的な知識や技術が必要なケアも含まれます。
- 生活援助: 掃除、洗濯、買い物、調理など、家事全般のサポートです。利用者本人または家族のために行うもので、同居家族がいる場合は原則として利用できませんが、家族が病気や障がいなどで家事を行うことが難しい場合は例外的に認められることがあります。
どんな時に訪問介護が役立つのか
- 時間がない時: ご自身の仕事や用事で家を空けなければならない時間帯に、親御さんの安否確認や食事、服薬の介助を依頼したい場合。
- 自分では難しいケアが必要な時: 専門的な体位変換や、体力的に難しい入浴介助などをプロにお願いしたい場合。
- 定期的な生活サポートが必要な時: 週に数回、決まった時間に安否確認や食事の準備、簡単な清掃をお願いしたい場合。
訪問介護を利用する流れ(ケアマネージャーへの相談から)
訪問介護を利用するには、まず介護保険の申請が必要です。要介護認定を受けた後、担当のケアマネージャー(介護支援専門員)に相談します。
- ケアマネージャーへの相談: 親御さんの状態や生活状況、介護で困っていること、ヘルパーに来てほしい内容や時間帯などを具体的に伝えます。
- ケアプランの作成: ケアマネージャーが、必要なサービス内容や頻度を盛り込んだケアプランを作成します。この際に、訪問介護をどの程度利用したいか希望を伝えましょう。
- 事業所の選定・契約: ケアプランに沿って、利用したい訪問介護事業所を選びます。ケアマネージャーがいくつかの事業所を紹介してくれますので、サービス内容や料金、事業所の雰囲気を比較検討し、契約を結びます。
- サービス利用開始: 契約に基づき、ヘルパーの訪問が開始されます。
利用のポイント・注意点
- 具体的に伝える: ヘルパーに依頼したい内容や、親御さんの生活習慣、お願いしたい家事のやり方などは、具体的に、遠慮せずに伝えましょう。
- 担当者との連携: 初めてのヘルパーさんには、親御さんの状態や注意してほしいことなどをしっかり伝えることが大切です。気になることがあれば、事業所のサービス提供責任者やケアマネージャーに相談しましょう。
- プライバシーへの配慮: 自宅にヘルパーが来ることへの抵抗感がある場合もあります。事前に親御さんとよく話し合い、必要に応じてケアマネージャーに相談しながら進めることが大切です。
デイサービス(通所介護)とは?日中の居場所と活動の場
デイサービスは、自宅から施設に通い、入浴、食事、機能訓練、レクリエーションなどを日帰りで行うサービスです。
どんな時にデイサービスが役立つのか
- 日中の見守りや活動の場が必要な時: 親御さんが日中一人で過ごす時間が長く、転倒や閉じこもりなどが心配な場合。他の利用者やスタッフとの交流を通じて、社会的な刺激を得られます。
- 身体機能の維持・向上を目指したい時: 体操やリハビリテーション、レクリエーションなどを通じて、心身の機能維持や向上を図りたい場合。
- 入浴介助が難しい時: 自宅での入浴介助が体力的に負担が大きい場合、デイサービスの専用設備で安全に入浴できます。
- 介護者の休息時間を確保したい時: デイサービスの利用時間は、介護する方が休息したり、仕事や買い物、趣味などの時間にあてたりできる貴重な機会となります。
デイサービスを利用する流れ
デイサービスの利用も、まず介護保険の申請と要介護認定が必要です。
- ケアマネージャーへの相談: 親御さんの日中の過ごし方や、どのような活動に関心があるか、デイサービスに期待することなどを相談します。
- ケアプランの作成: ケアマネージャーがケアプランを作成する際に、デイサービスの利用を盛り込みます。
- 事業所の見学・体験利用: いくつかの事業所を見学したり、体験利用をしたりすることをおすすめします。施設やスタッフの雰囲気、活動内容などが親御さんに合うか確認できます。
- 事業所の選定・契約: 利用したい事業所を選び、契約を結びます。送迎の範囲や時間なども確認しましょう。
- サービス利用開始: 契約に基づき、送迎車での送迎を含め、デイサービスの利用が開始されます。
利用のポイント・注意点
- 本人の意向を尊重する: デイサービスは集団での活動が中心となるため、親御さん自身の希望や性格に合っているかどうかが非常に重要です。嫌がっているのに無理に通わせようとすると、かえってストレスになることもあります。まずは体験利用から始めてみるのが良いでしょう。
- 送迎時間の確認: デイサービスの送迎は時間が決まっている場合がほとんどです。ご自身のスケジュールと合うか、送迎時間の目安を確認しておきましょう。
- 健康状態の変化を伝える: 利用中に親御さんの体調や気分に変化があった場合は、施設のスタッフに速やかに伝えましょう。
訪問介護とデイサービスを組み合わせて賢く活用する
訪問介護とデイサービスは、それぞれの特性を活かして組み合わせて利用することで、より効果的に介護負担を軽減し、親御さんの生活の質を向上させることができます。
例えば、「平日の日中はデイサービスで活動的に過ごしてもらい、夕食の準備や就寝前の介助に週に数回訪問介護を利用する」といった組み合わせや、「体調が優れない日やデイサービスがお休みの日に、訪問介護で食事や簡単な身体介助をお願いする」といった使い方も可能です。
ケアマネージャーは、これらのサービスをどのように組み合わせるのが親御さんにとって最適で、かつ介護する方の負担も考慮できるかを一緒に考えてくれる専門家です。遠慮せずに、ご自身の状況や希望を正直に相談してみてください。
「人に任せる」ことへの抵抗感をなくすために
介護を一人で抱え込んでいる方の中には、「他人に任せるのは申し訳ない」「親を施設に行かせるのはかわいそう」といった気持ちから、サービス利用に抵抗を感じる方もいらっしゃいます。
しかし、プロのサービスを利用することは、以下のような多くのメリットがあります。
- 専門的なケアを受けられる: 身体介護やリハビリなど、専門知識を持ったプロだからこそできるケアがあります。
- 事故のリスクを減らせる: プロのサポートがあれば、自宅での転倒や入浴中の事故などのリスクを減らすことにつながります。
- 介護者の負担が劇的に減る: 体力的な負担、時間的な拘束から解放され、休息や他のことに時間を使えるようになります。
- 介護される側の変化: 訪問介護で必要な生活援助を受けたり、デイサービスで他の人と交流したりすることは、親御さんにとっても生活の質の向上や心身のリフレッシュにつながります。「家に閉じこもりがちだったのが、デイサービスで友達ができて明るくなった」という話もよく聞かれます。
サービスを利用することは、決して親御さんを「捨てる」ことでも、「手抜き」でもありません。むしろ、介護する側が倒れてしまっては、元も子もありません。サービスを活用して自分自身が元気でいることが、結果的に親御さんを長く、そしてより良い形で支えることにつながるのです。
まとめ:サービスを味方につけて、自分自身のケアも大切に
訪問介護とデイサービスは、毎日の介護を助け、介護する方が自分自身の時間と心身の健康を保つための強力な味方です。
- 訪問介護は、自宅での身体介護や生活援助をサポート。時間がない時や専門的なケアが必要な時に役立ちます。
- デイサービスは、日中の活動や交流の場を提供。社会参加や機能訓練、介護者の休息時間確保につながります。
- どちらのサービスも、利用にはケアマネージャーへの相談が最初のステップです。遠慮せず、困っていることや希望を伝えましょう。
- サービスをプロに任せることは、決して後ろめたいことではありません。むしろ、ご自身が倒れないために、そして親御さんにより良いケアを提供し続けるために必要な手段です。
一人で全てを抱え込まず、利用できるサービスは積極的に活用しましょう。サービスを利用して得られる休息や自由な時間は、ご自身の心と体を回復させ、再び介護に向き合うためのエネルギーとなります。
「ケアする私も大切に」― このサイトの名前の通り、ご自身のケアも同じくらい大切にしてください。それが、持続可能な介護への第一歩です。